ほうづき@中洲

AND2006-02-28

そぼ降る雨の中、路地の入り口の見慣れぬ「大阪名物お好み焼」と言う看板に誘われてついふらふらと。
中で暴れたら建物ごと倒れそうな小さな店には腰の曲がりかけたおばあちゃんが一人。中洲ではようやく灯ともし頃の7時過ぎ、まだ誰も客はいない。壁に貼られたメニューからミックス焼き900円を注文。
客が来たのがさも不思議そうな顔でおだやかな大阪弁で話しかけられる。
「誰かに聞いてきはったん?」「いえ前の看板を見て…」そりゃ確かにイチゲンさんは滅多に来ないだろうなあ…
「へえ〜いつもはカンバン出さへんのに。三日休んだから今日は今出したとこやった。」「あ…そうなんですか」
「雨降ってかなんなあ。昨日降れば良かったのに、休みやったし。」「そうですねえ…」
「これは大阪の食べもんや。」「そうですよねえ。」
「大阪の人?」「え…ええ、去年まで大阪にいました。」
「そうかぁ。私もこっちに来てもう50年や。昔はお好み焼き言うてもこっちの人はだぁれも知りはらへん。こっちはみんなラーメンや。」「はぁ。」
「どげんして食べるとですか?とか言うてこっちの人はよう食べんかった。」「そうですかぁ。」
「最近は漫才もおもしろないなあ。」「おかあさんが好きなのはやっぱりエンタツアチャコとかですか?」「そやなあ。」
「誰かに聞いてきはったん?」…「い、いえ。」
「大阪の人?」…
こんな会話が同じところを三巡したあたりでお好み焼が焼き上がる。ちょっと小さめ、もちろんマヨネーズなんて置いてない。
こんなお好み焼うまいとかまずいとか言ったらバチが当たる。ただただありがたいお味。

ごちそうさん。」と言ったら「750円です。」「え!?」
お好み焼に焼酎お湯割り一杯でいくらなんでもそれは無いでしょう。どんな計算違いかと思ったら…
「一番のお客さんにはサービス。ゲンつけですねん。」それはどうもすいませんと千円札を出すと…
「あ!今日は財布忘れとるわ!かなんなあ。」「いや別におつりはいいですけどこの後お客さん来たら困るでしょう…」
「そら困るわなぁ。まあお兄ちゃん次必ず来てな、おまけするから。もうここで五十年やってるからまだしばらくは居ると思うわ。忘れんといて。」
う〜んこんな店忘れようったって忘れられまへん…。