天念寺修正鬼会(てんねんじしゅじょうおにえ)@豊後高田

AND2007-02-24

アメリカから帰ってきたと思ったらすぐに大分県は国東半島の山中へ。けっこういろんな祭を見てきたが、天念寺修正鬼会はまさに「奇祭」という言葉がぴったりの、そしてやたらに楽しい祭だった。

豊後高田市、昭和の街から車で30分ほど、川の中の石に彫られた不動明王が地元の信仰を集める長岩屋地区。その川中不動のほとりのある小さなお堂が修正鬼会の舞台となる。1200年の歴史があるという修正鬼会は旧暦正月七日に行われる五穀豊穣、国家安泰を祈願する行事。かつては国東半島各地の寺で行われていたようだが今ではここと、もう一つ岩戸寺と成仏寺と言う寺で隔年交互に行われるだけらしい。
修正鬼会は火祭り。まずは火災防止のため昼間、藁葺きのお堂の屋根に入念に放水が行われる。

堂の中では勤行が行われる。この時焼き餅に柚子胡椒をたっぷり塗りつけた「鬼の目覚まし」と呼ばれるものを食べるのが慣わし。ありがたい事に辛いのが苦手らしい坊さんから一本いただく事ができたがこれがもう辛いの何の。みんな一所懸命柚子胡椒をこそぎ落としながら食べていたのも良くわかる。



日が暮れるとまずは僧侶と介錯と呼ばれる人達が川の身を清める。そして5メートルの大松明(たいまつ)に火を着けお堂の前まで運び振り回すわ、松明同士をぶつけ合うわ、松明を石段にたたきつけるわという「献灯の儀」が行われる。こりゃ確かにあらかじめ水をかけとかなきゃ危なくてしょうがない。


そして夜の勤行が終わるといよいよ独特の祭の始まり。坊さん達が香水棒という棒を持ちお経のリズムに合わせて二人一組で軽快に踊りだす。板の間で下駄履き、リズムに合わせてステップを踏むためまるで坊さんのタップダンス。これが見もの。楽しいったらありゃしない。


すっかり会場があったまったところで真打の鬼の登場。ここでは鬼と言っても悪者ではなく神様仏様の化身。災いを祓い、鎮めてくれるありがたい鬼様なのである。しかしそうは言っても鬼は鬼。やることはかなり荒っぽい。僧侶が「鬼の目」と呼ばれる餅をまくと、その餅を捕った人を追い掛け回し松明で叩くのだ。餅は小さく割られてたくさんの人の手に渡るため、鬼は堂内中を走り回る事になる。もともと狭いお堂の中に観客はぎっしり。そこを火のついた松明を持った介錯と鬼とが走るのだからもうえらい騒ぎ。松明を柱や梁に叩きつけるもんだから火の粉は舞い飛び阿鼻叫喚。なんとなく自分の周りが焦げ臭いなあと思ったら松明のカケラが袖口に飛び込んでくすぶっておりました。これから見に行く方は必ず燃えにくい服、焦げてもいい服を着て行くことをオススメします。



鬼がしばし走り回った後、介錯が鬼を後ろから羽交い絞めにして鬼の狼藉は終了。その後希望者の善男善女が堂の中に進み、無病息災を祈願して鬼に松明で背中を叩いてもらう「加持の儀式」。しっかりやってもらったがこれがまた想像以上に力一杯バシッと叩かれる。さすがは鬼。こんだけたたかれりゃ一年は安泰でしょう。

それにしてもまさに天下の奇祭。こりゃ面白いわ。