立川談志、談笑親子会@サザンクス筑後


土地勘が無くて筑後市と言うのがどの辺なのか良くわかってなかったが思った以上に遠かった。そうは言っても談志とあらば何をおいても行くっきゃあるめえ。博多から各駅停車で50分、羽犬塚駅の周辺はかなり何も無い。そして会場のサザンクス筑後はやはり良くあるハコモノ行政の産物であたりにそぐわぬ立派なホール。良くこんなところで談志を呼んだもんだ
当初は大ホールの予定だったようだが案の定それほど売れなかったようで急遽キャパ500名の小ホールに変更。それでも客席は半分ほどしか埋まってない。やっぱり笑点に出てる人を呼んだほうがよかったんだろうなあ。東京都内なら2000人のホールでも即日完売する談志だけにこの人数を前に演ることはめったに無いだろうからどういう反応をするのかちょっとハラハラ。
前座の立川千弗(せんどる)の饅頭こわいの後は真打に昇進した立川談笑(「とくダネ」の小田桐レポーター)の時そば。話の中に中野駅北口の「かさい」と言う立ち食い蕎麦屋が出てきてこれが重要なキーポイントとなるすごい設定。しかしサザンクス筑後中野駅北口と言っても誰も知らんがな。この「かさい」と言うのは蕎麦の概念をひっくり返すほどのすさまじく○○い蕎麦を出すというのだが調べてみたらその店は実在。非常に気になる。(でもネットで見る限り意外と評判は良いです。)本来の落ちは時刻を九つと五つと間違えて三文損するわけだが談笑版はなんと丑三つ時。お化けかいな。

休憩の後はいよいよ談志。ひどい風邪の上、中耳炎で片耳聞こえないという最悪の状態らしい。見るからに痩せてるし顔色も良くない。今年七十だもんねえ…。
「このくらいの客入りだと、逆に来なかった奴に行けばよかったと悔しがらせるようなやつを演りたい」と前置きして「お前さん、いつになったら仕事に行ってくれるんだい。」と語り出す。まさか筑後で談志の「芝浜」が聴けるとは…はるばる来た甲斐があったもんだ。最初に感じた弱々しさもすぅ〜っと消えていく。
芝の浜で拾ってきた革の財布に四十二両。それを夢だと言い張るおかみさんを談志は完全に苦しい嘘をついているように演じる。ここが他の演者と根本的に違うんだなあ。喜んで舞い上がって表を歩いていたら大家に見つかって財布拾った事を白状させられ、そんなもんを懐に入れたらえらい事になると脅されて夫に嘘をつくおかみさんのけなげさ。そして最後に全てを告白するところのいじらしさ。自分は正しい事をしたんじゃなくて夫をだましていたと言う罪悪感から「捨てないでおくれよぅ。あんた、好きなんだよぅ。」くぅ〜泣けるぅ。
人情噺に慣れてないらしい筑後のお客さんは妙なところで笑ったりして談志も少し当惑していたが最後には水を打ったような静けさに。

今の談志、観ておけばむこう三十年威張れるはず。